2007年6月4日月曜日

若者たちに目立つ感染はしか大流行



はしかが猛威(もうい)をふるっています。関東(かんとう)地方を中心に、2001年以来の大流行(りゅうこう)です。乳幼児(にゅうようじ)がかかることが多い病気(びょうき)ですが、今回は、10代後半から20代の若者(わかもの)の患者(かんじゃ)が目立(めだ)ち、講義(こうぎ)を休みにする大学も出ています。専門家(せんもんか)は「予防接種(よぼうせっしゅ)を受けていない人はすぐに受けてほしい」と呼びかけています。

 はしかは、ぶつぶつした発疹(ほっしん)や高熱(こうねつ)が出るのが特徴(とくちょう)です。ひどくなると肺炎(はいえん)や脳炎(のうえん)を引き起こし、最悪(さいあく)の場合は死亡(しぼう)することもあります。

 周囲の人にうつる感染力(かんせんりょく)が強く、はしか患者が部屋にいると、空気中にウイルスがまかれ、同じ部屋の人が感染する可能性があります。そのため、児童(じどう)や生徒の間で患者が多くなると、学校は休みになるのです。

 症状(しょうじょう)が出たばかりのころは発疹も出ないので、はしかなのかどうか、はっきり分かりません。高熱でもないからと患者が外出し、せきをするなどして、被害(ひがい)を広げてしまっています。

 国立感染症(こくりつかんせんしょう)研究所が確認(かくにん)した、5月14~20日の15歳以上の感染者は68人でした。1週間の15歳以上の感染者数としては、1999年に調査(ちょうさ)を始めてから最多(さいた)になりました。

大学で休講相次ぐ
 多くの学生がはしかになった大学では、学内で感染が広がらないように講義を休みにしました。首都圏(しゅとけん)の大学を中心に、上智(じょうち)大、明治(めいじ)大、中央(ちゅうおう)大などと増(ふ)え続けています。

 早稲田(わせだ)大は5月29日まで、慶応(けいおう)大は6月1日まで休みとし、学生が学内に立ち入ることも禁止(きんし)しました。ただ両校とも、運動部については、部員が予防接種を受けるなどして、ウイルスに抵抗(ていこう)する力(免疫(めんえき))があることが確認(かくにん)されれば、休み中も活動を認めました。「ハンカチ王子」こと斎藤佑樹(さいとうゆうき)投手の活躍(かつやく)で盛(も)り上がる東京六大学野球の早慶戦(そうけいせん)も、無事(ぶじ)、開かれることになりました。

 患者数がピークを迎(むか)えるのは初夏と見られており、まだまだ注意が必要です。

 感染を広めないためには、はしかかなと思ったら人込(ひとご)みを避(さ)け、家で静かにしていなければなりません。国立感染症研究所は「学校ではしかが発生したら、毎朝体温をはかり、37・5度を超(こ)えるようなら、学校を休んでください」と話しています。

予防注射で免疫を
 予防方法は、予防接種を受けることしかありません。はしかのワクチンを注射して免疫をつけるのです。お父さんやお母さんに母子手帳(ぼしてちょう)などを調べてもらい、まだ受けていないという人は、すぐに予防注射をしてもらうようにしましょう。

 ただ、予防接種をしていても、免疫が弱まってしまった人ははしかになるケースがあります。中高年の人ははしかの流行を何度も経験(けいけん)していますが、はしかの流行が少なくなり、ウイルスと接(せっ)する機会(きかい)が減った若い人は、はしかにかかりやすいと指摘(してき)されています。病院で調べてもらい、免疫が弱まっていれば、再度(さいど)ワクチンの注射を打つ必要があります。

 一方で、不安に思った人たちが病院に殺到(さっとう)し、免疫の検査試薬(けんさしやく)が不足しています。検査ができないと、本当は自分の免疫が弱まっていないのに、取りあえずワクチンを注射しておこうという人が出てくるかもしれません。そうすると、今度はワクチンが足りなくなり、予防接種を受けていない人がワクチンの注射を受けられなくなってしまいます。同研究所は「予防接種は、これまではしかになったことがなく、注射していない人を優先(ゆうせん)して欲しい」としています。

2回接種で確実に
 はしかを完全に防ぐには、どうしたらいいのでしょう。

 欧米(おうべい)では、確実(かくじつ)に免疫をつけるために、幼児期(ようじき)に2回の予防接種を受けることが一般的になっています。その結果、年間の患者数を数十例ほどに抑(おさ)えることに成功した国もありますし、アメリカでは2回受けていない子供は、学校に入れません。日本もようやく昨年から、1歳の時と小学校入学前の2回、実施(じっし)する制度が始まりました。

 はしかが流行してからあわてるのではなく、家庭(かてい)でも学校でも事前(じぜん)にきちんと対策(たいさく)をとっておくことが大切ですね。

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